阪神・藤浪が1年以上ぶり白星 ファンは黙って期待するのみ
そんな中、私自身は昨年の夏ごろから藤浪について“あえて深く考えない”ようにしていた。それまでは本連載はもちろん、他のメディアでも藤浪を何度も取り上げ、自分なりの意見を発信してきたが、それもだんだん不毛なことのように思えてきて、ある時点からただひたすら藤浪の復活を信じて、黙って待ち続けることにしたのである。
なにしろ、巷の藤浪論はすべて出尽くした感があったのだ。先述した玉石混交の様相に加え、今年に入って落合博満や桑田真澄といった球界の大物OBたちまで藤浪論を語りだしたから、いつからかメディアやファンの注目も「いったい誰の言説が正しいのか?」といった卓見探しに移行しているように思えた。そうなってくると原点に回帰することが肝要で、その意味では藤浪という投手が大きな可能性を秘めた逸材だからこそ誰もが覚醒を期待してしまう、という点に集約される。
思えば藤浪は大阪桐蔭高時代から世代屈指の剛腕投手と騒がれ、甲子園で春夏連覇の偉業を成し遂げ、阪神入団後も高卒1年目から3年連続2ケタ勝利を挙げ、ストレートの最速は160キロを記録した。あらためて振り返ると、こんな野球エリートの怪物投手はそうそういない。その怪物が覚醒してほしいと願うのは自然なことだろう。
だから黙って期待するのみである。先日の前進が覚醒への第一歩となることを祈っている。