促成横綱の末路…10度目休場の稀勢の里に再燃する引退問題
「場所前の優勝宣言は横綱という地位が言わせただけ。立場上、そう言わざるを得なかったのでしょうが、今の醜態には相撲ファンもさすがに呆れているのではないか」
こう語るのは相撲評論家の中澤潔氏だ。3連敗の一人横綱稀勢の里(32)は4日目、前頭2枚目栃煌山(31)と対戦。左をおっつけて土俵際まで追い詰めるも、すくい投げをくらって土俵の外へ。行司軍配差し違えの末、逆転負け、10度目の休場となった。
横綱が初日から4連敗を喫するのは1931年春場所(宮城山)以来87年ぶり。1場所15日制が定着した49年夏場所以降では初の不名誉な記録だ。生気のない表情からは、「今は何をやっても勝てる気がしない……」という迷いや弱気もうかがえるが、そもそも稀勢の里の横綱昇進には疑問符がついていた。
2016年11月場所は12勝3敗で優勝次点も、終盤に平幕に敗れ、優勝争いから脱落。翌年の初場所は綱取りがかかっていたわけではなかったはずだが、稀勢の里は2横綱が休場の中、弟弟子の高安の援護にも助けられて上位争いを演じ、世間に「日本人横綱誕生」の機運がグングン高まった。14勝1敗で初優勝が決まると、それまでは綱取りに否定的だった横綱審議委員会の守屋委員長(当時)も「もう(昇進させて)よろしいのではないか。私というより(期待しているのは)国民でしょう」と発言。大関昇進後31場所目で賜杯を抱くのは歴代最も遅い記録であり、しかもこの場所は大関陣も総崩れ。13日目の豪栄道戦も不戦勝だったことから、「時期尚早」との声もあった。