今後なでしこベテラン4人はもっと“ベテラン風”を吹かせて
ポジティブな熊谷とネガティブな鮫島の塩梅
今大会メンバーは個性豊かではあるが、いかんせん未知数。熊谷自身も世界大会をまとめる立場は初の経験だ。オランダ戦後には「難しかった」と苦しい胸の内を明かしながらも「一緒に戦ってくれた仲間に感謝したい」とチームメイトへの謝意を示した。
そんな熊谷が、ピッチ上で頼りにする存在だったのが、DF鮫島彩(INAC神戸)である。
11年ドイツW杯優勝、15年カナダW杯準優勝、12年ロンドン五輪銀メダル、16年リオ五輪予選敗退――これらをすべて一緒に経験してきた。
本職のサイドバックとして時折見せるオーバーラップは、今大会でさらに鋭さを増した。熊谷不在の際にはセンターバックを担うこともあった。慣れないポジションに果敢に挑むベテランの姿は、なかなか拝めない。W杯本大会が近づくにつれ、むしろCBとしての信頼すら高めるまでに至ったのは、彼女の凄まじいまでの努力の賜物である。ポジティブな熊谷とネガティブな鮫島。この2人が、ちょうどいい塩梅となって両局面からチームを支えていた。
ピッチ上ではこの2人が、ベンチではMF阪口夢穂(ベレーザ)、MF宇津木瑠美(シアトル・レインFC)が、経験から導き出されるアドバイスを懸命に伝えていた。
彼女たちが揃って戦うワールドカップは、恐らくこれが最後だろう。
完全燃焼とはいえない結果に終わったが、チームのために彼女たちが出来ることはすべて出し切った。若手以上に悩み抜いた、この4人のベテランがいなければ、チームは空中分解していたかもしれない。
「これまでの2大会では感じたことのない感情を感じ、一緒に学ばせてもらった大会だった」と振り返った鮫島。ベテラン“らしからぬ”ベテランとして、若い世代を気遣ってきた4人だが、ここからはもっとベテラン風を吹かせればいい。
「まだまだ若いもんには負けないぞ!」というベテラン魂を2020年の東京のピッチで見せてほしい。
(フォトジャーナリスト)