英断か? 大船渡監督の決勝“勝ち度外視”采配に数々の疑問
ベンチをがんじがらめにした球数制限問題
その一方で、国保監督に同情する声もある。
何しろ佐々木は最速163キロを誇る「令和の怪物」である。この日の決勝は、早朝から長蛇の列。徹夜組も出た。佐々木目当てなのは、連日、岩手に集結した日米のプロスカウトも同じ。公式戦はもちろん、6月の練習試合にもNPBスカウト21人が足を運び、「大谷以上」といわれる剛腕と、そのドラ1候補の取り扱いには常に熱視線が注がれていた。
岩手大会での佐々木は、決勝までの6試合のうち4試合に登板。計435球を投じた間も、メディアやネット裏からの「球界の宝に何かあったらどうするんだ」という監視のような厳しい視線を、国保監督は気にせざるを得なかったはずである。
試合後、国保監督は決勝での登板回避の理由に投球数、登板間隔、気温を挙げたが、甲子園という目標と佐々木を取り巻く周囲の目に板挟みとなっていった。
加えて、昨今は球数制限問題の議論も活発化。今年6月初旬、日本高野連は投手の障害予防に関する有識者会議(第2回)で「一定の制限は必要」という指針をまとめた。全国大会のみが対象で、具体的な日数や球数は9月に決定する。
大船渡のような“1人エース”の高校、部員の少ない高校の指導者からは反対の声が上がる一方で、「高校野球は部活動」「選手の将来を考えるべき」という意見は大きくなり、昨春のセンバツ大会からはタイブレーク制度を導入。今夏の甲子園から準々決勝の翌日だけでなく、準決勝の翌日も休養日とすることになった。
佐々木ひとりを酷使すれば、時代に逆行し、周囲からの風当たりはますます強くなる。
そうした空気に、国保監督はがんじがらめになっていた。