五輪マラソン移転問題で危機回避した人物 札幌の黒幕説も
これで一件落着だ。
IOC(国際オリンピック委員会)と東京都、大会組織委員会、政府との会合で、2020年東京五輪のマラソン・競歩の札幌開催が、1日に決まった。IOCが先月16日、突如札幌開催案を発表してから約2週間、国内では連日、マスコミがこの問題を取り上げ、海外の国々も「終着点」に注目していた。
そのおかげでニンマリなのが、国際陸連(IAAF)会長のセバスチャン・コー(63)ではなかったか。
コー会長は1980年モスクワ五輪、84年ロス五輪の陸上1500メートルを連覇。800メートルでも連続銀メダルを獲得。12年ロンドン五輪招致委員会、同組織委員会会長を歴任し、15年からIAAF会長となったことでIOC委員も兼務。今回来日したコーツIOC副会長と同じく、東京五輪調整委員でもある。
札幌移転問題に関与したある関係者が言う。
「今回の騒動は、9月27日深夜に行われた世界陸上(ドーハ)女子マラソンで、酷暑のため68人中28人が途中棄権し、IOCが大きな衝撃を受けたことが発端です。『非人道的』と選手や指導者から批判の声が噴出。IOCは真夏の東京五輪であの惨状を繰り返してはならないと、マラソン・競歩の札幌開催を決めた。今回の移転騒動がなければ、世界陸上の責任者であるコー会長に批判が集中したはずです。彼はIOCの次期会長を狙っているといわれ、そのためにIAAF会長選に立候補したとみられている。東京五輪のマラソン・競歩の札幌移転問題がすんなり決まらなかったことで、ロードレース関係者の目がそちらに移った。ドーハの世界陸上に対し、批判の嵐が吹き荒れることはなく、大きな汚点にならずに済んだ。だからなのか、札幌移転プランはIAAFから出たという声さえある」
批判をかわすため、新たな問題を起こすのは「政治家」の常套手段ではあるが……。