プロが傾倒「ドライブライン」ブームの裏で思わぬ副作用が
このオフ、日本のプロ野球選手がこぞって門を叩いたトレーニング施設がある。米シアトルの「ドライブライン・ベースボール」だ。
阪神の藤浪晋太郎(25)や中日の投手たちが1人50万円を支払って沖縄に同施設のスタッフを呼び、トレーニングしたことで話題になった。ソフトバンクやロッテ、日本ハムは球団主導で米国の施設に選手を派遣したり、現地からスタッフを招聘した。
ドライブラインは投手の球速アップに定評がある。100グラム~2キロの異なった重さのボールを使ったドリルをこなし、球速、スタミナ向上を目指す。詳細なデータに基づいたフォームの助言や体づくりなども指導する。米レッズのトレバー・バウアー(29)がこの施設で球速アップに成功、5年連続2ケタ勝利を挙げるなどの実績を残したこともあり、日本国内でもブームに火が付いた。
しかし、ドライブラインのトレーニングによる「副作用」については、あまり聞こえてこないのが実情だ。メジャーでのプレー経験がある球界OBが言う。
「ドライブラインはさまざまなトレーニングをやってもうまくいかなかった人の最後の砦という認識がある。実際、ドライブラインの練習によって、肩や肘を故障したり、違和感を訴えたりする投手もいる。日本ハムの吉田輝星が秋季キャンプ中に肘の違和感を訴えたのもこれと無関係ではないとの声も聞く。米国内では同トレーニングによる故障リスクを警告する実験結果も発表されています」
ドライブラインの長所と問題点について、スポーツ科学の専門家で国学院大人間開発学部准教授の神事努氏はこう言う。
「個々の選手の体力測定、動作解析に始まり、『PDCA』(計画、実行、評価、改善)のサイクルをまっとうにやっているので、日本の野球界は見習うべき点はあるでしょう。日本の野球指導者の中には、その選手に合っているかどうかまで考えずに、フォームにメスを入れるケースもある。風邪なのかインフルエンザなのかをきちんと判断せず、薬を出すようなもの。正しく普及していくのはいいことだと思います」