春のセンバツ中止不可避…無観客試合では運営費まかなえず
「甲子園はテレビ中継の放映権料がなく、ほぼ入場料収入で賄っている。そこから大会開催費用や選手たちの宿泊補助などを支払うが、センバツでの支出は2億円を超える(19年センバツは収入約3.3億円に対し、支出は2.4億円)。費用面を考えれば、無観客は無理だと思う」
プロのスポーツでさえ、中止や無観客試合になっている。「教育の一環」を建前とする高校野球がチケットを売って客を入れるともなれば、大きな批判を浴びることは間違いない。たとえ無観客にしたとしても、主催である高野連や毎日新聞社が億単位のカネを負担できるのだろうか。アマ球界に詳しいスポーツライターの安倍昌彦氏は、「今大会は、去年の奥川(星稜)のような名前がある選手がいない。この大会で新たなスターが出てこないか、大きな関心があり、心待ちにしていましたが……」と前置きした上で、こう続ける。
■喜ぶ人はいるのか
「今は国の非常事態といっていい。甲子園はかつて、95年の阪神大震災、11年の東日本大震災があった年に、被害を受けた人たちへの励みに、という大義名分で開催をした。ただ、今回は事情が違う。開催すれば人の生き死にに関わるリスクを背負うことになる。頑張って強行して、本当に喜ぶ人がいるのかと考えてしまう。選手は喜ぶでしょうが、いざ大会が始まれば、なぜ野球だけが、という世論の批判は避けられない。その空気の中でプレーすることがバラ色の思い出になるのか。灰色の思い出にならないとも限らない。何の影響もなくてよかったというのは、あくまで結果論です。センバツを目指してきた子供や親御さんは残念だと思いますが、希望がかなわない事態が起きることも人生だ、という体験は、決して無駄にならないとも思います」