G球団社長が語るイメージ戦略 選手のCM出演もプロデュース
巨人球団社長・今村司氏 独占インタビュー(3)
巨人の今村司球団代表取締役社長兼編成本部長(59)の日刊ゲンダイ独占インタビュー最終回では、選手の知名度アップ戦略、ドラフトの方向性や球団の今後のビジョンなどについて聞いた。
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――オフの間、巨人の選手がCMやバラエティー番組に出演するのが目についた。今村社長は「勝つだけではダメ」という方針。昨年10月から坂本がCMに出演したり、亀井、石川が大食いの番組に出たり、積極的に露出しています。
「プロ野球選手になることは凄いことだと思っていて、個人の才能、運、人の縁にも恵まれないといけない。才能、運、縁を持っている人は、世の中の憧れの対象になって欲しいと思うんです。より多くの人に接してもらった方がいいし、今はツールが増えています。昔は野球中継やスポーツ番組だけだったものが、もっと広く見られるCMであったり、バラエティー番組に出て行って日本中のみなさんに見ていただいて愛してもらうのは、凄い大事なこと。それを普通にやっているだけなんです」
――昔は地上波で毎日巨人戦をやっていて、野球に興味がない人も巨人の選手を知っていたが、今はあまり知られていません。その反省からですか?
「そうですね。球団の方針というか明確にそういうことをやっていこうよと、口に出して言っているからだと思います。選手に対して(社長が)自分でコンテを書いて原稿を書いて、こういうイメージを持っているんだけどどう? と。(昨季まで在籍した)山口俊君には生命保険のCM、桜井君には進学塾、坂本君にはシャンプー、岡本君には殺虫剤のCMはどうか? と言っているんです」
――そんなにCMに出られるんですか?
「それは分かりませんが、野球選手は修羅場をくぐっているし、いろんな引き出しを持っているので、絶対に何でも反応できる。凄い才能を持っている集団なんです。自分がテレビ番組を作っていた時と同じようにプロデュースしている感覚ですよね。職種が変わりましたねと言われるんですけど、あまり変わった意識はないんです」
――球団社長というよりテレビマン。
「例えば一つの番組を作ります。企画会議じゃないですか? ジャイアンツをどういうチームにしたいかというのがあって、チームの中で、原監督は番組でいったら総合演出ですよ。コーチは演出家。選手は役者、タレント。どういう風に組み合わせたらいいか。監督がハーモニーを奏でられるよう、いい番組を作れるかなんです」
――プロデューサーっぽいですね。
「僕は宣伝、営業、収支管理だとか、コンプライアンスだとか外堀を埋めていって大きなコンテンツにしていきましょうというイメージ。何の違和感もなく、テレビマンと同じ感覚で仕事をしている感じなんです」
■CM、バラエティーで注目される
――CMなどの反響はありましたか?
「坂本君の影響が大きくて。恥ずかしがり屋なところがあったんですけど、去年CMに出てもらって、この間、しみじみ『出て良かったです』と言われたんです。『野球の坂本』を知らない人からずいぶん声をかけられたそうです。野球ファン以外の人に『CMに出ている坂本さんですよね』と声をかけられる機会が多くなったと言っていました」
――CM効果ですね。
「これは我々の義務と思っているので、これからこの職業を目指してくれる人から『憧れの対象』にならないといけない。最高のモチベーションじゃないですか。あの人みたいになりたい。話したいとか、そこに行きたいとか。そういうことを愚直にやることだと思います」
――坂本、菅野は成績は突出しているのに、爆発的な人気を得ていないのはなぜでしょうか? かつて巨人には松井秀喜氏のようなスーパースターが君臨していました。
「坂本君、菅野君は内々にというか、業界の中でのスーパースターですよね。確かに業界以外のところに訴求する必要はあると思います」
――編成本部長を兼務されています。最近は清宮、根尾、奥川など甲子園のスターを1位で指名している。ドラフト戦略が変わりましたか? 今はスター性重視ですか?
「お客さんが喜んでくれるかどうかでキャスティングするわけですよね。基準は相当ありますよね。あとは番組でどういう人が入ったら盛り上がるのかなとか、企画ができるのかなと考えますよね。戦略は凄く大事。素材を発掘して育成することが、球団の根幹にあるべきだと僕は思いますけどね」