年俸削減案で対立 労使“タフネゴシエーター”たちの交渉術
一方、2011年オフに中島裕之とヤンキースの入団交渉が決裂したのは、ヤンキース側が最初から譲歩できない最終条件を提示したことで、中島側に交渉の余地そのものがなかったためだ。
また、選手会と経営者の双方が相手の譲歩を当てにして妥協せず、結果として未曽有のストライキとなったのが1994年の労使交渉だった。「交渉のプロ」が揃っているはずの選手会側も経営者側も、実は目分量を見誤って対応していることが珍しくないことが分かる。
しかも、年俸が高額な選手ほど削減額が大きく、低年俸な選手の削減額を低く抑えるという機構側による一連の提案は、選手の分断につながりかねない。選手会側が一貫して「年俸の削減額は合意済み」として提案を拒否するのは、団結を維持して選手の「抜け駆け」を許さないことが不可欠になっているためだ。
■トランプは無関心
何より、双方とも妥協点を見いだす余地が乏しくなっている中で、94年のストライキの際に失敗に終わったものの調停を試みたビル・クリントンと異なり、今回はトランプ自身が大リーグの動向に全く関心を払っていないため「大統領による仲裁」も期待しにくい。
このように、労使ともに「タフネゴシエーター」が揃ったことが、かえって事態の紛糾を長引かせているのである。