あの落合でも叶わず…プロ野球初「4割打者」は誕生するか
ある時、落合氏がキャンプで若手を集めて打撃指導を行った。たまたま、そのキャンプを訪れていた野球評論家が選手に「落合からどんなことを教えてもらったのか」と尋ねると、即座にこう答えたという。
「落合に教わったことは全部忘れろ! すべてその通りだが、君たちにはレベルが高すぎる」
落合氏はロッテ時代、試合前には気象台に(本拠地だった)川崎球場の風向きや強さを聞き、その風に打球を乗せて長打を放ったと言われた。ふつうの選手は球場に掲げられた球団旗などを見て風の方向を判断するが、わざわざ気象台に――と噂されたのが落合氏らしい。それだけの技術があったからだろう。
ちなみに落合氏のシーズン最高打率は3割6分7厘(1985年)。この年を含め、3割6分台以上のシーズン打率を2度記録しているが、これはプロ野球では3人しかいない。残る2人はいずれも左打者(元巨人のウオーレン・クロマティと、元オリックスのイチロー)である。
卓越した打撃理論と技術に加え、たゆまぬ研究と努力。そんな落合氏でさえも「打率4割」は高い壁だった。
▽富岡二郎 スポーツジャーナリスト。1949年生まれ。東京都出身。雑誌記者を経て新聞社でスポーツ、特にプロ野球を担当。