巨人・松原聖弥「パンチ力」の源はスタンドでの太鼓叩き
兄は「一塁コーチャーを目指せ」と言ったが…
選んだ進学先は仙台育英高。兄の侑潔さんはこう語る。
「大阪は強豪校がひしめきすぎていますから、甲子園への出場を最優先にと決めたようです。スカウトから声が掛かっていたわけではないので、一般受験でしたが、思っていたよりも選手層が厚く、イップスを経験したりとレギュラーに定着できなかった。だから、弟が3年の夏大会を迎える直前、僕は言ったんです。『どんな形でも甲子園に出場しとけ。声をメチャメチャ出して、一塁コーチャーの座を掴み取れ』と。しかし、『そんな悲しいこと言わんでよ。僕は実力で戦いたいんだ』と返されてしまいました(笑い)」
その結果、同校は甲子園へ進出するが、松原は“ベンチ外”。バットをバチに持ち替え、スタンドから太鼓を叩いてチームを鼓舞した。
「この経験が聖弥の人生を大きく動かしたようです」と、秀樹さんはこう続ける。
「聖弥はベンチを外された時点で木製バットに切り替えて、大学受験のセレクションに向けて準備をしていました。そんな時に、太鼓の役割が回ってきた。あの動作は相当にハードだったらしく、筋肉が付いたことによって打撃力が格段に上がったと言っていました(笑い)」
特異な経験で培った打撃力を武器に、明星大(首都大学リーグ2部)のセレクションに合格し、進学。1年からレギュラーの座を掴むと、2年春から5季連続のベストナイン入りを果たした。大学生活の4年間でプロからお呼びが掛かる選手に成長し、巨人入団4年目の今季、スタメンに名を連ねるまでに才能を開花させた。
尻に火が付いた雑草魂で、どこまでのし上がれるか。
▽まつばら・せいや 1995年1月26日、大阪府大阪市生まれ。甲子園出場を最優先にし、仙台育英高へ進学するも、ベンチ外で3年夏の甲子園を迎えた。卒業後は明星大へ進学。南要輔(楽天)と共に、同大史上初のプロ入りを果たす。身長173センチ、体重72キロ。50メートルを5・75秒の俊足が武器。兄は太田プロダクション所属のお笑い芸人「ロングアイランド」の松原侑潔。年俸600万円。