近大・佐藤1位指名も阪神育成ベタ…よぎる“藤浪の二の舞”
メンタル面の強化が必要
性格面に関しても、こんな話がある。近畿地方の大学関係者が言う。
「佐藤はマイペースで我が道を行くタイプです。仁川学院を選んだのは単に、『家から近いから』という理由だったそうですしね。佐藤を視察した一部のスカウトからは、『グラウンドに来ていることが分かっているはずなのに、いつになってもアピールするそぶりを見せない。とにかく淡々とバットを振っている。性格はおとなしく、オレがオレが、と積極性に欠ける部分があるのではないか』という声が出ていた。仁川学院は進学校で、いわゆる野球学校で揉まれたわけではない。厳しい生存競争が繰り広げられるプロ野球界で生き残るには、精神的なタフさが求められる。メンタルの強化も必要になるのではないでしょうか」
つまり、佐藤が類いまれなポテンシャルを開花するためには技術やメンタルの強化が必要であり、プロ入り後の育成が何より重要になるというわけだ。
その点、阪神は大きな不安を抱える。選手の育成が不得手。投手はまだしも野手はFA補強や外国人選手に頼ってきた。過去10年間のドラフトを見ても、2011年の伊藤隼太(慶大)、15年の高山俊(明大)、16年の大山悠輔(白鴎大)、18年の近本光司(大阪ガス)と4人の野手を1位指名しているが、阪神OBが言う。
「野手は2位以下の選手を含めてもう壊滅的です。近年のドラフト指名野手で中心選手になっているのは、近本、大山、梅野(13年4位)くらい。16年新人王の高山や、17年に20本塁打をマークした中谷(10年3位)も、活躍したのは1年だけ。外野手として指名した選手に限れば、赤星憲広(00年4位)まで遡らないといけない。今季、26本塁打をマークするなど、才能開花の兆しを見せる大山も、昨季は全143試合に出場、4番を任されたこともあったが、今季は助っ人8人制を敷いたことで開幕はスタメンから外れていた。助っ人のボーア、マルテの不振や故障がなければ出場機会が限られ、ここまでの活躍はしていないでしょう」
藤浪晋太郎(12年1位)もそうだ。大阪桐蔭時代に春夏連覇を達成、阪神史上屈指の逸材にもかかわらず、近年は極度の制球難に陥り低迷。3月に「コロナ合コン」騒動を起こすなど、私生活も乱れる始末だった。
今でこそ中継ぎに活路を見いだしつつあるが、現場とフロントに「リリーフで再生を図る」という明確な方針があったわけではない。9月下旬の糸原、岩貞らのコロナ感染と、球団の内規違反の外食で大量10選手が一軍登録を抹消されていなければ、今も二軍でくすぶっていた可能性が高い。投手の頭数が少ないからたまたま中継ぎで起用したらハマっただけだろう。前出のOBが言う。
「ファンやマスコミがかまびすしい環境にあるとはいえ、首脳陣は外野の声を気にしがち。ちょっとでも打てない試合が続くとスタメンから外したり二軍に落としたり、じっくり時間をかけて育てよう、というこらえ性がない。育成が大事と言いながら、目先の結果を求めて補強に走り、育成の芽を摘むケースは枚挙にいとまがない。在阪のメディアも決勝打を1本打っただけで、ヒーロー扱いして大騒ぎする。それに勘違いする選手も少なくありません」
■本人は笑顔ナシ
12球団OKの方針を示していた佐藤だったが、矢野監督がクジを引き当てガッツポーズを繰り出した際は、笑顔を見せることはなく、「まあ、阪神で良かったと思います」と淡々と話していた。
「40、50本塁打を当たり前に打てる選手になりたい」
こう掲げた大きな目標を、育成下手で好素材を潰し続ける阪神で本当にかなえられるのか、不安は尽きない。