巨人「田口↔広岡」トレードの背景に坂本勇人の後継者問題
年俸7000万円と1600万円
また電撃トレードが成立した。
1日、巨人・田口麗斗投手(25)とヤクルト・広岡大志内野手(23)の1対1の交換トレードが成立したと両球団が発表した。
昨年、チーム防御率が4.61と12球団ワーストに沈んだヤクルトにとって、2016年から先発として2年連続2ケタ勝利をマークした田口の獲得は願ったりかなったりだろう。高津監督は春のキャンプを打ち上げる際、「こんなんじゃ絶対にシーズンを乗り切れない。本当に1カ月もしないうちに何とかしないといけない」と危機感を口にしていた。古田臨時コーチも、投手陣の不安を口にし、キャンプ地を後にしたという。
2人には“格差”がある。田口の今季年俸は7000万円、広岡は1600万円。巨人は昨年、ロッテに澤村をトレードで出しており、「全権」を持つ原監督が再び主力投手を放出したことになる。ずいぶん太っ腹だが、そうまでして獲得する広岡とは、どんな選手なのか。
智弁学園高から15年ドラフト2位でヤクルトに入団。16年9月には、セ・リーグの高卒新人としては56年ぶりとなる初打席初本塁打を放った。首脳陣の期待は大きかったが、昨季は打率.215。5年間の通算も同.214、21本塁打、54打点と伸び悩んでいた。さる球界関係者がこう言う。
「先日行われた巨人との練習試合で、広岡は原監督の目の前でドラ1ルーキー平内から一発を放ち、長打力をアピールした。トリプルスリー男の山田に弟子入りしていて、当たれば大きいのに確率が悪い。本職は遊撃だが、守備の不安が打撃に影響しているといわれ、定着できなかった。最近は遊撃の他に、三塁や外野も守るなど、たらい回し状態。マジメな性格で、外野挑戦を自ら志願するなど貪欲ですが、同じ右の内野手では、西浦の方が評価は上で、未完の大器といわれた。潜在能力は高く、他球団からトレードの打診が殺到していたようです」
有望株は台頭せず、他は帯に短し…
攻守に安定感を欠くのは承知で、原監督はそれでも欲しかった。背景には深刻な巨人の事情がある。
不動の遊撃手・坂本勇人(32)の後継者問題だ。差し迫った緊急性はないものの、今年33歳になる主将にいつまでも負担の大きい遊撃を守らせるわけにはいかない。下半身などに古傷を抱えていることもあり、原監督は早めに三塁などに回し、打撃に専念させる構想を持つ。が、代わりに遊撃を任せられる選手がいなければ、いつまで経っても動かせない。巨人のさるチーム関係者がこう言った。
「坂本が30歳になる前から、ずっといわれているのに、一向に進んでいないどころか、メドも立っていない。特に若手が台頭してこないのが、原監督や阿部二軍監督の頭痛の種。入団時から期待値の高かった高卒3年目の増田陸は、伸び悩んでいて、まだまだ後継うんぬんというレベルには達していないそうです。現在の一軍で務まりそうなのは、吉川(26=5年目)くらいだが、今は正二塁手だし、故障がちだから1年間遊撃が務まるか。二塁を争う北村(25=4年目)は二塁と三塁は守れても遊撃は厳しい。湯浅(21=4年目)も現状は力不足です」
原監督が新人合同自主トレを視察した際、ドラフト3位ルーキーの中山を「坂本勇人級」と称賛したが、2月のキャンプで生き残ったのは、ドラフト5位で一塁を守る秋広の方だった。
「原監督は3年契約最終年。勝っても負けても後継に譲る可能性があり、なんとか次の遊撃候補にメドを立ててから、次の監督にバトンを渡したい意向があります。それなのに適任者が出てこない。さすがに高卒新人は何年かかかるだろうし、ヤクルトで遊撃に定着できなかった広岡に、坂本の後釜が務まるかは疑問ですが、今は1人でも見どころがありそうな若手の遊撃候補を試すしかないのです」(前出のチーム関係者)
巨人は丸、梶谷、新外国人のテームズ、松原、亀井ら左打ちの外野手が多い。広岡は結局、手薄な「右の外野手」に収まる可能性はあるものの、原監督が在任中に推し進めたい坂本の後継者探しが行き詰まっていることは間違いなさそうである。