イの一番に見つけ出した野茂英雄の「左肩が動く」クセ
「ロッカーでストレッチをするので、どうぞ中へ入ってください」
1997年夏、ボビー・バレンタインに招待され、ドジャースタジアムへ向かった。関係者を通じて、ドジャースで大活躍していた野茂英雄に挨拶をしたい旨を伝えると、快くロッカールームへ迎え入れてくれたのだ。
「元気でやってる?」
「はい、何とか頑張ってます」
生き生きとした表情で、野球を楽しんでいる様子がひしひしと伝わってきた。マイク・ピアザらスター選手が着替えをする中、野球ファンだった子供の頃の気持ちが蘇った。
野茂とは近鉄時代、対戦相手として挨拶をする程度だったけれど、気遣いに感謝しきりだった。
野茂は90年代に対戦した投手の中でも屈指の存在だった。プロ1年目の90年にいきなり18勝をマークし、沢村賞、MVPなど8冠を獲得。何度も苦汁を飲まされた。
ある試合での対戦、1ボール2ストライクとなったところで雨のため試合が中断した。その間、最後はフォークで三振を取りにくるだろうと考えた。試合再開後、案の定ワンバンになるくらいのフォークが来たが、思わず手が出て空振り三振。ストレートと腕の振りが同じで、見極めが非常に難しかった。