地方の大学生選手を見るときは先入観やウワサ話は排除しろ
ウチの球団は野手を上位で狙っていたこともあり、ドラフトでは右腕の指名を見送った。
ところが――。翌年、ウチはその右腕にこっぴどくやられたばかりか、彼は新人王候補にもなったから、それこそ穴があったら入りたい心境だったよ。
■担当スカウトがあえてガセ情報を流すケースも
「東京六大学や東都ならともかく、地方の大学生だし、たまたま神宮で良かっただけだと思い込んでたんだろ。それに練習しないとか性格がチャランポランだなんて、おまえが実際に学校まで行って確かめたわけじゃないんだろ。だれが言ったのか知らねーけど、ウワサ話に踊らされて……」
部長にこう言われて返す言葉もなかったさ。
「どうせ地方の大学生だろうという先入観や、ウワサ話の類いは排除して選手を見ろよ。野球名門校でなければ選手がチンタラ動いてたって不思議はねえし、担当スカウトがあえてガセ情報を流すケースも中にはある。これだと目を付けた選手にとってマイナスになるような話をわざわざ吹聴するんだ。練習態度が良くないとか、性格が悪いとかな。地方のリーグで飛び抜けた数字を残していても、マイナスの情報が出回れば、やっぱり地方出身だからなぁと、どうしたって評価を下げたくなる。神宮やドームで結果を出せなければなおさらだ。知り合いの東北担当のスカウトなんて、狙った選手が大学選手権でサッパリだと手をたたいて喜んでるよ」
部長の話を聞いているうちに、改めて地方の大学生の評価は難しいと思ったね。
(プロ野球覆面スカウト)