<9>三村君は高橋尚子に嘘をついてソールの厚みが異なるシューズを渡した
その夜、小雨が降る中でマラソンの表彰式が行われた。表彰台の一番高いところで高橋が金メダルを胸にした。君が代が流れる中、センターポールの日の丸がゆっくりと揚がっていく。私は高橋に感謝し、涙した。
日本陸上界にとっては64年ぶり、日本女子陸上選手では史上初の快挙は、小出監督の指導と高橋の努力のたまものである。しかし、帖佐さんが嫌がる2人を無理やり帰国させて小山医師のところへ行かせたこと、小山医師が適切な治療をしたこと、三村君が左右の高さが違うシューズを作り、嘘をついてそのシューズで勝負させたこと、それらも偉業達成の要因になったのではないだろうか。(つづく)