球団にダメ出しされた選手がよそに上位指名されて留飲が下がった
■「オマエが売り込んだんじゃ…」
ムシャクシャした気持ちでドラフトを迎えたら、案の定、その選手が他球団に上位指名された。その瞬間、思わず「ヤッター!」って声を上げそうになったね。球団は評価しなくても、見る人は見てる、オレの目は節穴じゃないって、こっそり小躍りしたくらいだ。
ドラフト後、今度は部長がオレのところにやってきて、「おまえが盛んに推薦した選手が上位指名されたな」と切り出したから、てっきりホメられるのかと思ったらそうじゃない。
「まさか、おまえが、あの球団に売り込んだんじゃねーだろうな。ウチはポジションの兼ね合いがあって見送るが、本来なら上位指名するはずだったとか何とか……」と、こう続けた。
「オレはあの選手を評価してない。何しろ投げ方が良くないし、体の開きも早い。この部分を直せば良くなるかもしれないというポイントがあるにはあるが、時間がかかる気がする。何年か前におまえが猛烈にプッシュした選手が他球団に上位指名され、社長にホメられたことをアチコチで吹聴してるようだけど、いまだにファームでくすぶってるじゃねーか。この前のドラフトでおまえが推薦した選手の真価が分かるのは数年後。喜ぶのは早いんじゃねーの」
部長の地獄耳には恐れ入ったけど、グーの音も出なかったね。
(プロ野球覆面スカウト)