ますます高まる「CSなんかやめちまえ!」 セパ王者対決白熱で日本シリーズのあり方浮き彫り
リーグ王者同士の対決が盛り上がっている。
ヤクルトとオリックス。コアな野球ファン以外は、顔と名前が一致しないメンバーも少なくないだろうが、21日、京セラドーム大阪で行われた第2戦はヤクルト・高橋奎二(24)、オリックス・宮城大弥(20)による息詰まる投手戦。0-0で迎えた八回、ヤクルトは青木が決勝の適時打を放つと、高橋は9回133球の熱投でプロ初の完封勝利を挙げ、対戦成績を1勝1敗のタイとした。「気合で投げました」と誇らしげだった高橋に、二軍監督時代から手塩にかけて育ててきた高津監督も、「よく投げたし、よく投げられるようになった」と褒め称えた。
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■2戦連続2点差以内の接戦
今年の日本シリーズは2戦連続で2点差以内の大接戦。1戦目もオリックス・山本由伸(23)、ヤクルト・奥川恭伸(20)の投げ合いから、八回にヤクルトが村上の2ランでいったん勝ち越しながら、最終回にオリックスが驚異の粘りで劇的なサヨナラ勝ち。決勝打を放ってお立ち台に上がった吉田正が「いやー、しびれました」と漏らしたように、多くの野球ファンが手に汗を握ったに違いない。
今季の両チームは、公式戦で最後の最後まで優勝争いを繰り広げた上に、順当にクライマックスシリーズ(CS)を勝ち上がった。シーズン1位チーム同士の対決は、2016年の広島対日本ハム以来5年ぶりである。
真の日本一決定戦にふさわしい戦いになっているわけだが、その一方で、日本シリーズを巡っては、その出場権を争うCSの廃止や見直しの議論が絶えない。
パは04年からプレーオフとして、セは07年から導入。翌08年からファイナルステージで1位チームに1勝のアドバンテージが付いた。10年にロッテがシーズン3位から下克上日本一を達成、一定の盛り上がりを見せたこともある。
CSは公式戦と同様に各球団の主催試合扱いだから、その分、興行収入が得られる。満員の観客を動員した場合、球場のパイが大きい巨人や阪神は、チケット代やグッズの売り上げなどで1試合当たり2億円規模の収入があるという。球団としては貴重な収入源である。
公式戦の勝ちを貶める
CS導入以降、1位チームが日本シリーズに進出しなかったケースはないものの、近年では、17年にセ3位のDeNA、18、19年にパ2位のソフトバンクが出場。2位以下のチームが出るたびに、「143試合を戦って雌雄を決するレギュラーシーズンの重みがなくなる」との声が噴出している。
1998年、横浜監督としてリーグ優勝、日本一を達成した野球評論家の権藤博氏はかねて、CSの廃止を訴え続けている。コロナ禍でセのCSが中止された昨年、日刊ゲンダイの連載「奔放主義」でこう記した。
「CSという短期決戦で日本シリーズ進出を決める方式は、最も重みがあるはずのペナントレース優勝の価値を貶めるものだし、たった6球団しかないリーグのうちの半分に日本一のチャンスを与えるのは甘すぎる。今季、そのCSがなくなれば、優勝以外は2位も6位も一緒という本来のペナントレースのあり方に戻る。首脳陣や選手の評価も変わってくるだろう。2位や3位で首がつながってきた監督、コーチの手腕がシビアに査定されれば、曖昧になっていた責任の所在もはっきりするはずだ。2位狙い、3位狙いは通用せず、純粋に頂点を目指し、そのための戦略が求められる」
■新庄監督も「2位も6位も一緒」
メディア関係者が言う。
「日本ハムの新監督に就任した新庄監督も、親しい関係者に『優勝が無理なら最下位を目指す。2位も6位も一緒だから』と言っている。2位以下でCSを狙うような用兵、采配はせず、あくまで優勝してこそ価値があると考えているからです」
今年の王者同士の白熱した戦いぶりによって、公式戦や日本シリーズのあり方が改めて浮き彫りになったといっていい。ヤクルトファンの吉川潮氏(作家)は、「開幕前に下位予想だったチーム同士の対決。試合は最後までどっちが勝つかわからない面白さがある。まして、昨年まで2年連続で巨人がソフトバンクに完敗していましたからね」と、こう話す。
「セは、勝率5割以下の巨人が出場できる可能性があったという時点でおかしいと思う。私も、CSの存在はどちらかというと否定的です。権藤博さんは『マラソンを走った後で、短距離走をやらせているようなもの』というようなことも言っていたが、まったくですよ。そもそも、CSを始めた動機が不純。消化試合をなくすと言ってスタートしたが、要は最後まで観客を入れたいという経営者側の都合だった。時に盛り上がることもありますけど、日本のモデルとなったメジャーのポストシーズンは全30球団中、各地区の王者を含めた10球団が戦うからこそ成り立っている。日程も、日本が公式戦後のCS、日本シリーズの開幕が間延びしている一方、ワンデープレーオフに始まり、タイトなスケジュールでワールドシリーズまで戦う。ワケが違いますからね」
短期間で得られる利益のために公式戦や日本シリーズの価値を貶め続ければ、長期的に見て損を被りかねない。
CSがなければ借金1で3位に沈んだ巨人の原監督が新たに3年契約を結んで続投なんてバカなことはなかったのではないか。
ヤクルトとオリックスによる緊迫した熱戦を見るにつけ、やはりCSは廃止すべきだ。
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