プロレスラー船木誠勝さんが語るヒクソン・グレイシーとの死闘「腕を外そうとするうちに気が遠くなり…」
僕が上から顔にパンチを2発入れ、ヒクソンの顔面がバウンドする感触があり、「しっかり入った」と思いました。あとで聞いたらヒクソンは眼窩底骨折をして、しかも骨折していない方の目もしばらく見えなくなったそうです。今思えばあの瞬間が勝機でした。
ヒクソンが立った後、僕の大振りのパンチが当たらず、首相撲から膝蹴りをもらい、引き落としで前向きに倒され、結局はマウントポジションをとられ、上からパンチを入れられ続けました。しかも僕の片手をロックした形なので外せない。予想外の展開ばかりで。
もう少し我慢すれば1ラウンドが終わると思って「あと何分?」と顔だけセコンドに傾けて聞いた瞬間、スルリと背後をとられてチョークスリーパー(裸絞め)。今まで感じたことのない力で首を絞められて。ギブアップはしないと決めていたけど、息もできない。ヒクソンの腕を外そうとするうちに気が遠くなり、視界が薄く、白くなっていく感じ。そして真っ暗になる……。落ちた瞬間ですね。
意識が戻る時は逆に黒からモヤがかかったボケた視界になり、だんだんはっきりしてくる。「はっ!」と気づいたら、グレイシー一族がリング上に大勢いて盛り上がってる。「こりゃ負けたんだな」と気づきました。どのくらい意識がなかったのかわからないので、後ろにいた鈴木みのるになぜか「今、何時?」と聞いたんですよ。それが蘇生して第一声。ビデオで見ると、記憶がない間も立っていたので、ビックリしました。とにかくヒクソンは勝つための戦法がすごかった。