高木美帆が“専門外”500mで自己ベスト更新&五輪銀を手にできた理由を岡崎朋美氏が分析
■欠場も視野に入れていた
最終15組目の滑走が終わり、銀が確定すると跳び上がって喜びを爆発させた高木美は「渾身のレースができた」と笑顔を見せた。今大会は5種目にエントリー。13日間で最大7レースの過密日程をこなす“鉄人スケーター”だが、本命の1500メートルで優勝を逃し、一時は500メートルの欠場が頭をよぎったという。
「(連覇がかかる15日の)団体パシュートのことを考え、500メートルに出場するか本気で考えた」
そもそも、最もメダルの可能性が低いとみられていた種目。長野五輪500メートル銅メダリストの岡崎朋美氏がこう言う。
「アウトスタートで相手が見えるため、最初の100メートルをうまく通過して相手を追う形が取れました。男子500メートルで銅メダルを獲得した森重航選手と同じパターンです。高木美帆選手はコーナリングがピカイチ。カーブに入るときの膝の角度も完璧で、膝の位置をしっかりと下げた姿勢ができていました。1500メートルでは手足がバラバラでしたが、500と1500のスケーティングは全くの別物。1500は最初の入りが多少遅くても、残り3周のラップタイムを落とさず行けば挽回できる。でも、500は最初の100メートルでつまずくと巻き返せない。なので、足の動かし方やタイミングの取り方、力の入れ方も違うのです。1500の強化をするため、500の滑りを取り入れるのは戦略のひとつ。高木美帆選手は普段、そこまで重点的に500の練習はしていないでしょう。ただ、500で必要なトップスピードの出し方を1500に生かせる。『500は本職ではない』と気負いが少なかったこと、(コロナ感染で)離脱していたヨハンコーチが戻ってきたことも自己ベストを更新しての銀メダルとなった要因だと思います」