新庄監督「1年間はトライアウト」の真意 結果が出なかったらクビ…はコーチだけじゃない
「早かったし、楽しかった。寂しい気持ちと、さあ出発というか、違う場所での戦いが始まっていくんだなと」
2月28日に打ち上げた沖縄キャンプをこう振り返ったのは日本ハムの新庄剛志監督(50)だ。
「ノーヒットで点を取る野球」「守り勝つ野球」を掲げ、現有戦力の底上げに終始。低くて速い送球を意識させるためにフラフープを使った練習や、アクロバチックな走塁練習などの風変わりなメニューを取り入れただけではない。
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■シーズン中も激しく入れ替え
臨時コーチとして各界のスペシャリストを招聘した。陸上十種競技元日本王者でタレントの武井壮氏(48)は普段の歩き方、5年連続盗塁王の赤星憲広氏(45)は盗塁阻止のコツ、ハンマー投げ五輪金メダリストの室伏広治スポーツ庁長官(47)は体幹の鍛え方などをレクチャーした。
実戦が始まるとガラガラポンで打順や守備位置を決め、ゼロから選手の可能性を探った。この日のキャンプ総括で「シーズン中も選手の入れ替えを激しくやる」「選手全員を一軍で使う」と話したように、今後も「横一線」が続くようにも見える。
新庄監督は選手に「1年間はトライアウト」とも話しているという。ならば勝負は来年、選手には1年間の猶予があるかのように聞こえるが、悠長に構えていたらとんでもないことになるのではないか。この「1年間」は目的のハッキリした「トライアウト」だからだ。
■チャンスは少なくなる
「(一、二軍の入れ替えをしながら)徐々に徐々にシーズンの途中からキューッと、上がってこれる選手のチャンスは少なくなっていく。だんだんだんだん固めていくという感じ」とは新庄監督。そして「チャンスが少なくなっていく」選手についてはこう言った。
「二軍に落とされてふてくされてしまう選手は一軍に上げない。だって、練習で動きが悪い、足がちょっと故障気味で二軍に落とされて『なんでオレ?』ってなること自体、プロとして失格。(二軍に)移動させられても、常に声がかかるポジションにいないといけないってオレはずーっと思ってやっていましたね。入れ替えを激しくするから、気持ちのない選手は下げる。(くさって)そのままユニホームを脱がないといけないのは自分だから」
そして「努力は一生、本番は一回、チャンスは一瞬。努力をしていないとその一瞬のチャンスは掴めないから」とも。一瞬のチャンスで力まない方法に関しては「練習で思う存分、納得できるまでやっていると、本番で、さあ、オレを見なさいという気持ちになって、力が入らないから。だから練習をしっかり、人がいないとき、寝ているときにやりなさいって」と続けた。
「言っても分からなかったら…」
新庄監督の話はコーチ陣にも及んだ。
「オレが求めることをしっかり(履行してほしい)。その場で(オレが)言って選手とやるんだけど、次の日は(選手が)それをやっていない……。っていうのはコーチのせいになるんで。『昨日言ったやん、言ったでしょ?』って同じことを何度も繰り返しているので、そういうコーチをね。言っても分からなかったら……どうしよう(笑い)」
コーチへの苦言はこの日だけではない。GAORAのキャンプ中継に生出演したある日は、グラウンドの様子を眺めながら「コーチ陣がダメ。オレが言ったことを伝えきれてないのが嫌なのよ。オレ、このバントは要らないって言ってるの」「さっきも選手がトンボかけてたから、何回言いましたかって話、コーチに。選手は休憩させたいのよ」と苦々しく話していた。
新庄監督はすでに「コーチの皆さんは結果が出なかったら1年間でクビになってもらいます」と通告している。が、結果を出せずにクビになるのはコーチに限らない。選手が一瞬のチャンスを生かすためには、納得するまで練習する必要があると明言。欠かせないプロセスまでレクチャーされた選手も、同様に結果を求められている。いまはトライアウトだし、1年後が本番だなんてタカをくくっていたら、選手もコーチもふるいにかけられるのは必至だ。