<23>ドーピング違反のロシア人選手を見て…私の心の中で悪魔が囁いた
レース5日前の朝、起きてツバをごっくんとのんだ瞬間だった。
「あ、これはやっちゃったな」
喉に痛みが走り、すぐに風邪をひいたと分かった。すぐにチームドクターのもとへ駆け込んだものの風邪薬は飲めず、イソジンもドーピング検査に反応するリスクがあると聞いてなす術なし。結局、のど飴をなめ、首元を温めるくらいしかできなかった。
特に隠すつもりもなかったが、その日のうちに記者さんから「岡崎さん、喉大丈夫ですか?」と聞かれ、何で知っているの!? と困惑した。が、記者さんの次の言葉で“犯人”はすぐ分かった。
「長田監督から聞きましたよ」
私には、小平奈緒選手のような「実は1カ月前に右足首を捻挫して……」という涙の後日談すらさせてもらえなかった。