【特別寄稿】引退表明の小平奈緒選手が富士急行内をザワつかせた「芯の強さ」
12日、スピードスケートの小平奈緒選手(35)が引退を表明した。シーズン後、本人が現役続行の意思を示し、すでにトレーニングも始めていただけに、引退会見には目を疑った。とはいえ、奈緒ちゃん、本当にお疲れ様でした。
引退試合は10月に開催される全日本距離別選手権。まさに選手がシーズンを始める大会を選んだのも驚いたが、長野県のエムウェーブは小平選手のホームリンク。私も地元で! と思っていたが、地元にはリンクがなかった。振り返れば、私の引退試合もエムウェーブ。ソチ五輪の選考会がラストレースだった。
奈緒ちゃんは真面目で勉強家。自分が選んだものや決めたことに対しては脇目も振らず、没頭できるタイプだった。海外遠征で同部屋になったときも外国人選手の技術や世界記録保持者だったカナダのシンディ・クラッセン選手のスケーティング映像をずっとチェックして研究していた。また、部屋では本もよく読んでいた。私も真似して読もうと思ったが、1ページ目で眠くなってすぐに寝てしまった。
甘え上手な一面もある一方、信頼できる人に対して以外は一歩引いて冷静に観察できる。悪い人に騙されるタイプではないですね(笑い)。
■ライバルの富士急行に2泊3日の合宿を申し込む
奈緒ちゃんがジュニアからシニアに上がってきたときのこと。その姿を見て、「サインを何度ももらいに来ていたあの小学生の子だ!」とすぐに気づいた。当時は着実に上がってきたなと思いつつも、まだ自分の思い描いたスケートができず、黙々と練習していた。私は500メートルのスケーティングやスタートの構え方を聞かれ、清水宏保くんにはダッシュのコツを聞いていて、500メートルのスペシャリストになろうという努力を感じた。
まだ五輪でメダルを取る前、ライバルである富士急行に2泊3日の合宿を申し込んできて、あまりの珍事に富士急内がザワついたことも。富士急の練習メニューもきちんと日誌に書き留めて分析できる選手だと、感心したのを思い出す。
芯の強さとあくなき探求心の塊が小平奈緒なんだと、改めて尊敬した。