88年シーズン近鉄「仰木マジック」の種明かし 驚異の粘り腰を引き出した采配と選手起用
2連勝がリーグ優勝の絶対条件だった1988年10月19日のロッテとのダブルヘッダー。
いまとなっては驚異とも思える近鉄の粘り腰を引き出した要因のひとつは「仰木マジック」と呼ばれた監督の采配や選手起用にあったように思う。
第1試合は終盤の八回に村上隆行の2点適時打で追い付き、九回、梨田昌孝さんの適時打で勝ち越した。当時のダブルヘッダー第1試合は延長なし。ギリギリのタイミングで値千金の適時打を放った2人は、いずれも代打だった。
そして2試合目。同点で迎えた七回には吹石徳一さんと真喜志康永さんにソロ本塁打が飛び出した。三塁手の吹石さんはシーズン2号、遊撃手の真喜志さんは3号。どちらかといえば堅実な守備を評価されていた2人が、優勝を左右する大一番で貴重な本塁打を放った。
近鉄は当時、若手が力をつけ、ちょうどベテランと入れ替わりのタイミングだった。就任1年目の指揮官はあえて自分の色を出そうと偏った選手起用をしがちだが、仰木監督は違った。梨田さん、村田辰美さん、羽田耕一さん、栗橋茂さん、吹石さん、新井宏昌さんといった引退間近の人たちも必要とし、重要な局面で起用した。実際、ダブルヘッダーの1試合目は偵察要員も含め22人、2試合目も21人がスコアブックに名を連ねた。