88年シーズン近鉄「仰木マジック」の種明かし 驚異の粘り腰を引き出した采配と選手起用
ベテランが疎外感を抱いて腐ってしまうと、チーム内の空気がよどむ。彼らは影響力が大きいから、若手が変に気を使ったりするようになる。
■「9勝9敗は労力の無駄遣い」
しかし、仰木監督は状況に応じてさまざまな選手を起用し、個々の長所をつなぎ合わせて戦った。
「9勝9敗の投手は労力の無駄遣いや。3勝1敗の投手を3人使った方が効率がいい」と言ったこともある。
代打や代走や守備固めを多用。DHも含めてスタメンだけで戦うわけじゃない。全員参加型だから、その分、チームに貢献する選手が多かった。
いい点の取り方をすると、選手たちがベンチ前に出てきて異常に盛り上がるシーンが増えたのも必然だった。
1試合目に劇的な勝ち方をして、優勝へのマジックを「1」として迎えた2試合目。七回に吹石さんと真喜志さんが本塁打を放ったときも、ベンチ前はお祭り騒ぎ。リードを2点に広げていよいよイケイケムードになったものの、そのまま押し切るどころか、まだまだ、ひと波乱もふた波乱もあった。