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阿波野秀幸元プロ野球選手

1964年7月28日、神奈川県生まれ。桜丘高、亜大を経て、86年のドラフト1位で巨人、大洋(現DeNA)を含めた3球団競合の末、近鉄に入団。87年、新人王、89年は19勝(8敗)、183奪三振で最多勝と最多奪三振のタイトルを獲得。その後、巨人、横浜でプレー、通算75勝68敗5セーブ。引退後は巨人、横浜、住友金属鹿島、中日などでコーチを務めた。

トイレで酔いつぶれ、野手のミスに平然…野茂英雄のそんな姿が周囲との距離を縮めた

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■ミスをした野手との酒席でもグチはこぼさず

 1年目の開幕から先発ローテーション入り。初登板は4月10日の西武戦だが、なかなか勝ち星が先行しなかった。四球で無駄な走者を出すなど、自分で勝てない展開にした試合もあった。が、5月8日、北九州で行われたダイエー戦は違った。延長十回、180球を投げながら遊撃手・米崎薫臣の判断ミスでサヨナラ負け、3敗目(1勝)を喫した。

 その試合後のこと。私は野茂を誘い、飲みに出掛けた。選手数人と、確かミスをした米崎も呼んだと記憶している。せっかく良い投球をしながら勝てなかった。プロ1年目のルーキーだけに、このままズルズルといってしまうことを心配したのだ。

 野茂はしかし、米崎のミスをまったく気にしていなかった。「勝ちたかった」などと言えば、米崎は傷つくし、打てなかった野手たちも責任を感じる。だが、グチひとつこぼさず、よく飲み、よく食べ、そしてよく笑った。

「野手の人たちに申し訳ないです」


 最近はこんなことを言う若手投手も珍しくない。野茂はそういったこともあまり口にしないタイプだったから、誤解を招くケースもあった。

 だが、ミスした本人を非難するわけでなく、普段通り、淡々と飲み食いする姿に、ナインの野茂を見る目は変わっていった。野茂は少しずつ、チームに溶け込んでいった。(つづく)

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