仙台育英Vで高校野球「地方の逆襲」が始まった! 4強すべて優勝経験ゼロは偶然にあらず
全国で2勝できるチーム
他県も独自の強化策を打ち出している。広島OBで投手コーチなどを歴任し、現在は徳島県の中学、高校野球の技術指導員を務める川端順氏がこう言う。
「徳島は教育委員会が主導し、新チームが始動する今の時期から高校3校、中学10校をピックアップして、私が各校に指導に行くという形を取っています。教育委員会からは私の母校で今夏の代表校でもある『鳴門を倒せるような、全国で1、2勝できるチームをつくって欲しい』と言われていますが、私は4強以上を目指したいと思っています。ただ、今のところ徳島の指導員は私だけ。プロを経験したOBは、鳴門をはじめ、徳島商、池田、鳴門渦潮などにもいるので、もっと指導員が増えれば強化も進むと思います」
名将が地方に散っている点も見逃せない。
報徳学園(兵庫)を20年以上率いてセンバツ優勝経験のある永田裕治氏は、日大三島(静岡)監督就任2年目の昨秋に東海大会を制覇。今年、甲子園春夏連続出場を果たした。東海大相模(神奈川)で春夏通算4度の甲子園優勝経験を誇る門馬敬治氏は、今秋から創志学園(岡山)の監督に就任。秀岳館(熊本)を強豪校に押し上げた鍛治舎巧監督は、母校の県岐阜商の監督として古豪を復活させ、九州国際大付(福岡)も元西武の楠城徹監督が手腕を発揮している。
20年4月から私立校の無償化が始まったことも無関係ではないだろう。
大阪府は他府県に先駆けて11年から無償化が実施されており、ある強豪校の監督は当時、「無償化制度があるから、ウチを含めた大阪の高校で野球をやっていた子も、無償化が全国に広がったら、ウチはあかんと思いますよ」と苦笑いしていた。前出の美山氏が続ける。
■地方の子が地元の高校に進学
「条件はありますが(東京を除く年収590万円未満の家庭)、経済的な事情で授業料が全額免除になる特待生として地方の私学へ進んでいた有望な中学生を大阪につなぎ留めることができた。全国的に授業料の実質無償化が始まったことで、地方の子が地元の高校に進学して野球を続ける可能性も出てくるのではないか」
中でも東北では、宮城で活動する東北楽天リトルシニアから地元の高校へ入学して甲子園を目指す中学生が増えているという話もある。今大会が地方勢の逆襲が始まる契機となるかもしれない。