MLBの傲岸不遜にNPBの及び腰…このままでは日本のメジャー選手がWBCに参加しにくくなる
大谷が優勝直後に放り投げた帽子は米国で展示
こうしたMLBのやりたい放題は今に始まったことではない。2009年大会で採用されたダブルイリミネーション方式(全出場国が2度負けるまで優勝のチャンスがある敗者復活戦のある試合形式)は、06年大会の予選で失点率「0.01」差で日本に敗れた米国が勝ち上がりやすくするために採用したと言われた。
日本では現在、東京ドーム内にある野球殿堂博物館にWBCの優勝トロフィーが展示され、連日、大行列ができている。しかし、決勝戦で大谷翔平(エンゼルス)がトラウト(同)を三振に打ち取り、胴上げ投手になった直後に放り投げた帽子は米国の博物館に展示されているという。球界関係者が言う。
「侍ジャパンは1回目大会からWBCIに対し、米国の野球博物館の展示用にユニホームを提供している。ユニホームの肖像権がWBCIにあるからですが、今回もWBCIは当初、大谷の着用分も含めて東京ラウンド終了時の引き渡しを求めてきた。準決勝、決勝ではユニホームが1着足りない事態に追い込まれかけたのです。17年大会では言う通りに提供してクリーニングで四苦八苦。こうした細かなところまで、やりたい放題ぶりが目立つのです」
歴代監督はことあるごとに大会のあり方の改善を訴えてきたが、しかし、現場が口角泡を飛ばしても、NPBと12球団が指をくわえているだけではいつまでたってもその構図は変わらない。
日本は大会収益の大部分を生み出しているが、栗山監督がWBCIに出した多数の要望のうち、認められたのは日本製ロジンの使用などごくわずか。ダルも言っていたが、メジャーにとって公式戦開幕前に行われるWBCはあくまでオープン戦の延長。それなりに盛り上がってカネが儲かればいいのだ。
「NPBは大会創設時、MLBから共同主催を持ちかけられたそうだが、当時は日本球界全体が参加に消極的なこともあってこれを断った。そんな経緯もあって、NPBはWBCIに強気に出づらいのかもしれないが、日本の大会に対する絶大な貢献度を考えれば、ボイコットをするくらいの強硬な態度に出てもバチは当たらない」(同)
たとえば、13年大会の開催を巡っては、開催2年前のオーナー会議で、NPBがWBCIに対して分配金やスポンサー収入など、収益の改善を要求することを決議。日本プロ野球選手会もその交渉の次第では参加をボイコットするとした。粘り強い交渉の結果、12年夏、侍ジャパンのスポンサー権などの日本側への帰属が認められた。本気で動けば、それなりの成果が得られる可能性はあるのだ。
栗山監督はこの日、「NPBの皆さんには、報告書というか、そういうものを出します」と話した。次回大会は3年後の26年。侍ジャパンにとって不可欠な大谷やダルらメジャーリーガーに気持ちよく参戦してもらうためにも、NPBはMLBに今すぐにでも、拳を振り上げるべきではないか──。