猛虎軍団「アレ」に“見えない敵”が…阪神・岡田監督の雨の日の過ごし方は?
岡田監督は競馬通
では、岡田監督はどう過ごしていたか。遠征先で週末が雨天中止となった時の行動をひとつ紹介したい。
競馬予想だ。岡田監督は競馬通でも知られ、暮れの大一番、有馬記念の当日には旧知の知人10人ほどで阪神競馬場の特別来賓席へ1Rから出撃する。就任直後の昨年は「有馬は内枠よ」と、見事に3連単と馬単を的中。数年前にはグループの一人が、一般競走で3連複90万円台の超大穴をゲット。「かなわんわ。誕生日とか好きな数字とか。そんなんで当てられたらなぁ」と言いながら、我がことのように喜んでいた。
また就任直前の8月には、評論家として所属していたデイリースポーツの社杯イベントのゲストで地方の園田競馬場に登場。馬券を買いながらラジオ、ユーチューブ番組で“オカダ予想”を展開した。「ここは初めて来たけど、侮れんな。とんでもない馬が突っ込んでくるわ」と悪戦苦闘。前半はトントンだったものの、最後はドボン。自信家の悔しそうな表情が印象的だった。
今週はいよいよダービーウイーク。3戦3勝の皐月賞馬、ソールオリエンスが無敗のダービー馬に君臨するかどうかで盛り上がっているが、競馬の祭典で思い出すことがある。
阪神の東京宿舎は岡田監督の現役時代半ばまで、ウインズ後楽園から目と鼻の先にあった。あるシーズンの週末ゲームが雨天中止になった翌日。岡田監督からダービーの買い目と金額が書かれたメモ、そして現金を預かり「これ、頼むわ。当たったら換えといてな」と頼まれた。
周囲は「どうせ外れるからノめ。その金でパーッと行こう」とはやし立てるが、とんでもない。ウインズでオッズをチェックすると堅めの本命。高給取りの岡田監督の勝負馬券だけに、巨額の払戻金となる。ノめるはずがなかった。それよりも換金した際の端数を祝儀としていただく。岡田監督は「これ、手間賃。とっとけ」と言う人だったし、ノんで大やけどをするより手堅かった。
岡田監督の馬券作戦は采配とよく似ている。あわよくばの大穴(大量点)はまず狙わない。手を出しても中穴まで。基本は手堅い本命サイド(セオリー重視)だ。あれもこれもと手を広げず、勝負の時と判断したレース(イニング)に軍資金(戦力)を分厚く投下する戦術が多かった。
広島、名古屋、横浜にもウインズはある。遠征先の週末が雨天中止となれば新聞、専門紙の出馬表とにらめっこ。根拠は何か。ファクターはどこにあるのか。岡田監督は現役時代から、野球に通じる勝負勘をしっかりと養っていた。
(長浜喜一/スポーツライター)