巨人V9の功労者 城之内邦雄は川上監督に嫌われ“当て馬”に…「おかげで辞める踏ん切りがついた」
しかも、当時の監督・川上哲治との折り合いの悪さも凋落に拍車をかけた。本人によれば、こんなことがあったという。
■オールスター戦への推薦を断った途端、態度が急変
ある年、川上からオールスター戦に推薦するとの打診があった。
しかし、もともと職人肌で目立つことを好まず、オールスター期間中はいい休養になると考えていた城之内は、川上の申し出を理由も説明せず断った。すると、川上は途端に冷たい態度を取り始めたのだという。城之内はトレードに出してほしいと球団に申し入れたこともあったようだが、それも、
「よそで投げられて活躍されたら困る」
との川上の一言でかなわず、現役最終年の71年には当て馬(試合に出場する予定のない選手を偵察メンバーとして先発させる作戦)をほとんど使わなかった川上が城之内を当て馬に起用している。
「6番、ライト、城之内」
球場に響き渡ったアナウンスを城之内はどんな思いで聞いていたのか。
「あの時は本当に頭にきた。しかし、あれがあったおかげで辞める踏ん切りがついた」
後年の城之内の述懐だ。
(ライター・清水一利)