中学卒業前に渡仏しパリSGの入団テストに合格も…3カ月の短期留学が海外志向をかき立てた
実は、この留学はパリSGへの入団テストだった。本人も周囲も知らなかったが、最終的にオファーが届いた。が、父には「まず勉強することが大事」という強い信念があり、パリに残ることを許さなかった。
結局、鹿実に行くことになったが、貴重な体験が松井の海外志向をかき立てたのは事実だろう。
■鹿実2年夏休みに下宿先から逃げ出した
鹿実での3年間は一筋縄ではいかなかった。
ドリブルに強いこだわりを持ち、時にエゴを出し過ぎては松澤総監督に怒鳴られた。猛烈な走りの練習を課され、心身ともに限界寸前だった。
鬱憤が積もりに積もった高2の夏休み。松井は下宿先である松澤総監督の家を出て、黙って京都の実家に戻ってしまったのだ。
「自分の部屋で寝かせてくれ」と母・美幸さんに言うと、そのまま倒れ込むようにして眠ってしまったという。
「でも、父は許さなかった。僕を叩き起こし、その日のうちに鹿児島へ連れて行き、一緒に松澤先生におわびしました。『可愛い子には旅をさせよ』と言いますけど、当時の父はそんな心境だったんでしょうね。2人の息子の親になった今、何となく分かります」と神妙な面持ちで言う。