《門田博光の巻》「打撃の求道者」は練習方法もケタ外れだった…僕が地獄を見た“10分”の要求
ベテラン選手がオープン戦の遠征に同行しない年があり、僕は彼らの練習相手として福岡に残り、打撃投手をこなしていました。途中、門田さんに「田尻、勝負しよう」と言われたので、僕もギアを上げてストライクゾーンめがけて投げる。それを門田さんが打つ。
そんな打撃練習の最後、「おまえフォーク投げられるか?」と聞かれました。応じたところ、「おー、ええフォークや」。その次の言葉に仰天です。
「フォークだけ10分間投げられるか?」
ここからが地獄の始まりでした(笑)。僕のフォークは人さし指と中指の間にボールを深く挟むタイプ。それを10分間、60球は投げ続けなければいけない。ムチャもいいところで今思えば、よくあんなことができたと自分で自分に感心するほどです。
投げ終わった後は指が開いたまま。門田さんは「最後はまっすぐいこうか」と言いましたが、僕は「すいません。指が広がって戻らないんで、2、3分待っててください」と、必死で指を閉じようと悪戦苦闘しました。
とにかく打撃に関しては妥協をせず、時には人を巻き込むことも辞さない。次回はそんな門田さんに思いもよらぬ「お小遣い」をもらった話をしましょう。