「らんる曳く」佐々木中氏
■「僕の小説は食える人には食える納豆みたいなもの」
独特な文体とリズムに気おされる。難解と捉える人もいれば、心をわしづかみにされ、とりこになる人も。
「僕は難しい文章を書いているという意識はまったくない。そもそも万人に読みやすい文体など存在しないし、幻想だと思う。僕からすれば、産経新聞のコラムのほうがよっぽど難解ですよ。『原発が効率のよいエネルギーであることが嘘だとわかり、ウランも輸入に依存している。(中略)だからこそ原発を推進しなければならない』と書いてある。論理が破綻していて意味が分からない。僕の小説のほうが断然読みやすいでしょう?(笑い)」
主人公は2年前に妻を亡くした男。絶望的な喪失感に苦しみながら「生きることの意味」を体感していく。心情描写はなく、フィジカルな描写が苦しみをより倍増させる。
「内的独白やら心の叫びやらを文字にするなんてくだらない。そういうものを読みたい人は村上春樹や百田尚樹をどうぞ。独白では伝わらないようなものがあるはずなんです。これが届く人には届く。食える人には食える。納豆みたいなものなんでしょうね、僕の小説は」