「あさめし・ひるめし・ばんめし」日本ペンクラブ編、大河内昭爾選
■文筆家32人の味覚エッセー
昭和の文筆家たちの味覚随筆を編んだアンソロジー。
三浦哲郎の「鰯たちよ」は、岩手の実家に帰郷した折に母親と取った昼食についてつづる。氏の郷里では、冬は朝炊いたご飯が凍ってしまうので、昼食は湯漬けが定番だった。その際のおかずは塩漬けの鰯を七輪の炭火で焼いた「鰯っこ」と決まっていたという。年老いた母と「鰯っこ」なしの湯漬けを食べながら、子供時代を追想する。その他、2日前の硬くなった大福を餅網の上で焼いて食べるおいしさや、お供え餅を崩して焼いて食べる味わいなどをつづる永井龍男の「餅を焼くこと」など。32人の滋味深い名文を味わう。(筑摩書房 880円)