「木村伊兵衛のパリ」木村伊兵衛著 田沼武能監修
日本で目にしたフランスの写真家アンリ・カルティエ・ブレッソンのプリントに「写真の使命を忘れていた」と衝撃を受け、彼と会うのがパリを訪ねた第一の目的だった。カルティエ・ブレッソンの紹介で木村は、ロベール・ドアノーとも親交を結ぶ。ロベール・ドアノーは、とっておきの撮影場所や人々の居る場所を惜しげもなく案内してくれたという。そうして撮影されたパリ祭の日に裏町の路上で踊る人々など、ドアノーと木村の両者が愛した下町の風情も数多く収録されている。
デジタル撮影の映像に慣れた目に、その場の空気感や温度さえも感じられるような温かみのある氏の作品は、新鮮に感じられるに違いない。
巨匠のすごさを改めて感じる。
(朝日新聞出版 1600円+税)