安保法案強行採決で考える「日本はなぜ戦争に突き進んだのか」
「太平洋戦争」児島襄著
今年は、戦後70年。今や日本人の多くが「戦争を知らない子供たち」だが、安保法案が強行採決され、にわかに戦争が現実味を帯びてきた。あらためて「日本はなぜ戦争へと進んだのか」「戦争で人々に何が起こったのか」を知っておきたい。「戦争×文学」(集英社 全20巻)の編者のひとりで、歴史学者の成田龍一氏が選ぶ10冊は――。
5年の歳月を費やして国内外の資料にあたり、戦争に突き進んだ過程を概説した戦争史。
「世界に出ていきたい日本と、英国や米国などの時の大国と利権をめぐり、対立したというのが大筋です。当時、政府が主張したのは、石油や鉄などの輸出をストップした英米などABCD包囲網を突破しなければ日本は孤立する、我々は被害者だというもの。孤立への危機感が日本を戦争に踏み切らせたわけです。もっとも政府は開戦までに、治安維持法で言論を取り締まり、日米交渉の決裂を理由に包囲網と対抗するには独国と手を組むしかないなど、少しずつ最終的には戦争に踏み切るしかない方向に持っていきました。安倍政権が特定秘密保護法、武器輸出の許可、安保改正と徐々に道筋を整える手法は、重なるところがあります」(中央公論社上・下各920円+税)