インターネットの発想を先取りした老監督 ロバート・アルトマン

公開日: 更新日:

 ハリウッド映画沈滞の70年代に気炎を吐いた2人の監督のドキュメンタリー映画が相次いで公開される。先週末封切りの「サム・ペキンパー 情熱と美学」、今週末が「ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男」。実はこの2人、ともに1925年2月生まれ。しかし作風と人生は対照的。「ワイルドバンチ」のペキンパーは破滅派で会社との衝突が絶えず、離婚を繰り返したが、その破天荒ぶりが仲間を強烈に惹きつけた。「M★A★S★H」のアルトマンも下積みの長い異端児だが、カンヌ映画祭で受賞。不遇時代は欧州で製作し、家庭も円満で子どもにも恵まれた。

 ペキンパーは暴力描写の一方、男の情感にひっそり心をこめながら60歳目前で孤独に死んだが、アルトマンは「古典的ハリウッド映画」と呼ばれる昔ながらの物語叙法を無視した自在な語り口で81歳の長寿を全うした。2本が同時期公開なのは偶然だが、これは絶好の奇縁だろう。ちなみに常識的な語り口を拒んだアルトマンの手法は「ハイパーテキスト的」といわれる。

 連想をたどるように自在に他のリンク先に飛ぶインターネットの発想を先取りしたわけで、現代のコンテンツ産業を論じたフランク・ローズ「のめりこませる技術」(フィルムアート社 2200円+税)もこれを「アルトマン的」と呼んでいる。

〈生井英考〉

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出