「酒肴日和」池波正太郎著 高丘卓編
株屋の店員だったある早春、主人の吉野さんが連れていってくれた料亭で出た「白魚の椀盛り」。春になると、あの細くて小さくて美しいかれんな白魚に「あ、ごめんよ、ごめん」と謝りながら箸をとった主人の顔や姿が、思い浮かぶと追想。また、ある日の夕食にハマグリを入れ湯豆腐を食べたと記しながら、湯豆腐には薄く切った大根を入れると、豆腐が白くふっくら、おいしく煮えると、うんちくをさらり。その他、母が作る「ライスカレー」の思い出から、フランス料理界の大御所トロワグロ兄弟の店で食べたフルコースまで。
食道楽で知られる文豪が自筆のイラストを添えて日々の食卓と食にまつわるエピソードをつづったエッセー。(徳間書店 920円+税)