「残響のハーレム」中村寛著

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 アフリカン・アメリカンが多く居住して独自の文化を築いた、ニューヨーク・ハーレム地区。9.11以降、イスラム脅威論が高まるなか、ハーレムに住む彼らはどのように感じ、考え、生活し、イスラムのなかに何を見ているのか。

 本書は、2002~04年に研究者である著者が現地に飛び込んで見聞きした、差別と貧困と暴力で分断された米国のフィールドワークの書である。

 その第一歩は、ハーレム街の社交場である理髪店から始まる。普通の生活者である男に、アフリカン・アメリカンによるイスラム運動の研究者であることを明かして彼らの声を集め、比較し、ブラックムスリムの史実や資料と照らし合わせていく。論文や研究書とは違い、マイノリティーの息遣いが伝わる肌触りのある文章も魅力的だ。

 なお、発行元の共和国は昨年できたばかりの出版社。手軽さや流行を追わずに、骨太で思想性の高い本を刊行しており、本書もその期待に十分応えてくれる。(共和国 3400円+税)

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