「名作うしろ読みプレミアム」斎藤美奈子著
「これこそ、昼のために、とっておくべきものだ」
本が禁制品になった近未来で、役所の焚書課に勤めるモンターグは違反者の本を焼くのが仕事だ。だが、本の魅力に取りつかれ、重い本を抱えて逃げる。そのときつぶやくのが冒頭の言葉。
読書の明日を信じる結末になっているのだが、斎藤は作品中の「スピードが求められる時代には本も簡約版になり、すべては煮つまってギャグの一句になり、簡単に結末に達する」という言葉を引用し、焚書とは言論統制ではなく、大衆化のなれの果てだと喝破する。スマホも焚書の尖兵かもしれないと(「華氏451度」)。
名作をラストの一文から読むシリーズ第2弾。(中央公論新社 1500円+税)