「彼方への忘れもの」小嵐九八郎著
新潟の高校生・大瀬良騏一は、憧れていた友人青木の姉・芙美子が東京に養女に行ったことを知った。高校時代は1年間に27人からラブレターをもらい、採点してゴミ箱に捨てたというすごいお姉さんだ。
騏一の家は貧しい母子家庭だったが親戚などの援助を受け、芙美子の家の近くの早稲田大学に入学する。早大闘争に引き込まれたりしながら、重役秘書になったという芙美子に会う機会を狙っていた。ようやく再会した芙美子はどうやらうつ病にかかっているらしい。騏一自身も1歳で長崎で被爆したことを上京前に母から聞き、原爆病を恐れて東大病院で検査を受けるのだった。
60年代の切ない青春を描く書き下ろし長編小説。(アーツアンドクラフツ 2200円+税)