「突変世界 異境の水都」森岡浩之著
2014年に刊行された「突変」は超面白い小説だった。突変とは、「突然変移」の略で、地球上の一定区画が突然消滅し、異世界の地球の区画と入れ替わってしまうというもの。要するに、こちらの一定区画があちらに飛び、代わりにあちらの一定区画がやってくるわけだが、問題は、やってくる区画に危険な生物がいっぱいいること。
前作では、4年前に大阪が500万人近い人間とともに「時空転出」したと書かれていたが(それを「関西大移災」という)、本書はその時の大阪を描く長編である。つまり前作の前日譚だ。
前作は町内会規模の「突変」だったが、今度は大規模な「突変」であるのがキモ。市役所や副知事、自衛隊などを一緒に転出してしまうのである。ところが中央政府とは隔絶している。そういう状況になると、どうなるか。主導権争いになるのだ。
たまたまその時、関西にいた6人の国会議員を集めて臨時政府をつくる一派もいれば、これを機会に暴れまくろうとする暴力集団もいる。さらにそこに、宗教団体や大企業まで絡んでくるから大混乱。
前作は日本SF大賞を受賞したようにSFの世界でも高く評価されたが、基本は自然災害を描くパニック小説なので、SFを読み慣れていない読者でも大丈夫。たっぷりと楽しめるだろう。
文庫本600ページという大著だが、一気読みは必至。週末の午後の読書におすすめの一冊だ。(徳間書店 900円+税)