「出会いなおし」森絵都著
イラストレーター・佐和田時子の個展会場に、ナリキヨさんが姿を見せた。彼は、仕事を始めたばかりの頃の時子に、小説の挿絵を依頼した編集者だった。学生時代から仕事に恵まれ、技術不足でインチキの皮を着て、正体を知られまいと堅くなっていた時子に、「私はあなたの敵ではなく、仕事のパートナーです」と言ってくれた人だった。その仕事を終えたあと、もともと彫刻をやりたかった時子はパリに2年間留学することに。ナリキヨさんは「いつか見せてください。佐和田さんの立体を」と言って送りだした。帰国して2年後、ナリキヨさんから仕事の依頼が……。(「表題作」)
人との出会いや再会を描く6つの短編。(文藝春秋 1400円+税)