銀座の街にも28種類の雑草が生えている
「身近な自然の観察図鑑」盛口満著
都会のマンション暮らしで、会社と自宅を往復する日々で、一番難しいのが自然との触れ合いではなかろうか。ところが、わざわざ里山や海に出かけなくても、近所の公園はもちろん、通勤・通学路や自宅のベランダや庭、果ては家の中や、日々口にしている食材からも自然観察は可能だという。本書は、そんな身近な自然観察の楽しさや方法を説いたガイドブック。
身近な自然観察の第一歩は雑草の観察から。どんなに洗練された街でも、道端には雑草が生えている。銀座でフィールドワークした時は、なんと28種類もの雑草が見つかったという。ただ雑草を見つけることに興味が持てない場合は、その雑草が食べられるかどうかなど、視点を変えてみることで、雑草観察も面白くなるという。例えばキク科の草は食べることが可能だが、ケシ科の植物は毒草が多いのだとか。
そのキク科の雑草の代表のタンポポからじっくり観察。タンポポの花びらのように見える、あのひとつひとつが実は花で、小さな花がたくさん集まってひとつの花のように見えているのだという。
さらにタンポポの在来種と外国から入ってきた移入種の簡単な見分け方や、キク科の他の植物との綿毛比べ、そしてタンポポの花茎を手折った時に切り口から出る白い汁で作る消しゴムなどの遊び方まで。タンポポだけでも知らないことだらけで、どれほど身近な植物に目を凝らしていなかったか痛感させられる。
他にも、ネコジャラシをはじめ、街路や公園で観察しやすいイモムシやテントウムシ、家の中の衣類や本の間などに入り込んでいる「シミ(紙魚)」や、庭のカタツムリ、食卓に上るカキやリンゴの観察など。普段それと気づかない身近な自然の中に未知の世界が広がっていることを教えてくれる。(筑摩書房 860円+税)