日本人女性がフィンランドで食堂を開く

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「かもめ食堂」群ようこ著 幻冬舎文庫/457円+税

 先頃、「ムーミン」はどこの国を舞台にした物語であるかという大学入試センター試験の問題が話題になった。中に「ムーミン」はスウェーデン語で書かれていて、それをフィンランドと結びつけさせるのは、複数の民族と言語が共存している国に対して無神経だという指摘もあった。しかし、日本人にとってフィンランドという国の知識が極めて乏しいのも確か。そんなフィンランドに食堂を開いた物語が本書。

【あらすじ】
サチエはヘルシンキにあるかもめ食堂の経営者。口癖が「人生すべて修行だ」という古武道家の父親から離れるべく、サチエは素朴だけどおいしい食堂を外国で開くことを決意する。そこで思いついたのがなぜかフィンランドだった。

 実現へ向けて準備を始めたサチエに運命の女神がほほ笑む。宝くじで1億円が当たったのだ。いざ開店したものの、見知らぬ若い(といっても38歳だが)東洋人のやっている店を、現地の人たちは簡単には受け入れてくれない。

 暇を持て余したサチエは町の本屋で旅行客のミドリに出会う。ミドリは自分を厄介者扱いする弟夫婦に見せつけるために外国旅行を決意、目をつぶって世界地図を指さしたところがフィンランドだった。

 2人は意気投合し、ミドリは店を手伝うことに。次いで現れたのがマサコ。両親の介護に疲れたマサコは、テレビで見たフィンランドの「嫁背負い競走」に感動してやってきたのだ。こうして食堂は、3人の日本人女性が切り盛りすることに……。

【読みどころ】
同名の映画は、サチエを小林聡美、ミドリを片桐はいり、マサコをもたいまさこという配役。ヘルシンキの撮影場所に、その名も「ラヴィントラかもめ」というレストランが16年4月にオープンしたそうだ。 
<石>

【連載】文庫で読む 食べ物をめぐる物語

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