「カサノヴァ」(上・下) 鹿島茂著
身長190センチの美丈夫で精力絶倫、おのれの才覚のみで絶世の美女たちを次々と籠絡した、希代の色事師ジアコモ=ジロラモ・カサノヴァ。その華麗なる女性遍歴は有名な「回想録」に詳しいが、本書はその「回想録」から、9歳で下宿先の年上のベッチーナに誘惑されて弄ばれた体験から始まって、50歳を目前にして生地のベネチアに帰還する直前までのカサノヴァが語る女性体験を拾い出した、エロチック体験の一代絵巻。
著者いわく、現代の日本男性はひとしなみにバーチャルな女しか愛し得ないドン・ファンに堕している。ドン・ファンとは理想の女を求めはするが、結局、愛するのは自分だけで、籠絡した女を片っ端から捨てていく自己中心的な男のこと。対してカサノヴァは、自分の快楽を最大化するためにまず相手の快楽を最大化することを目指した。
これぞ生身の女性に愛される最大の秘訣。かくして、カサノヴァの多種多様な恋愛術を徹底解読した本書は、現代の日本男子の福音となる。
(キノブックス 各1900円+税)