「総務部長はトランスジェンダー」岡部鈴著
妻と中学生の息子がいる総務部長は、出勤前にトランクルームに立ち寄り、女性用の下着と服に着替える。社内メールでカミングアウトして以来、OLとして働くことに決めたのだ。
きっかけは1年前。不本意な残業をさせられた日、知人に連れられてきたことがあるゲイバーに行ったこと。その店でおしゃれで明るい人たちと話して、憂鬱な気分が消えた。クリスマスパーティーに女装で参加するよう誘われ、すね毛を剃っていたら、小学6年生の頃を思い出した。山口百恵に憧れていて、自分がすね毛が濃くなることが受け入れられなかったのだ。会社では女性、家庭では男性として二重生活を送ることを選んだ男性の告白的ノンフィクション。
(文藝春秋 1600円+税)