「新薬の狩人たち」ドナルド・R・キルシュ、オギ・オーガス著 寺町朋子訳

公開日: 更新日:

 著者のキルシュは、米国創薬研究の第一線で35年にわたり活躍するドラッグハンター(新薬の狩人)。新薬開発といっても、ドラッグハンターが提案した創薬プロジェクトが医薬品に結実する確率はわずか0.1%。本書は、ペニシリンやストレプトマイシンといった有名な薬もそうした難関をいくつもくぐり抜けて登場してきた新薬であることを教えてくれる。

 マラリアの特効薬キニーネ、麻酔薬のエーテル、梅毒の治療薬サルバルサン、血糖値を下げるインスリン、経口避妊薬のピル等々、歴史上画期をなす新薬がいかにして生まれ、それがどのように製品化されていったのかを多様なエピソードを交えて描かれる。なかでも、ピルの開発に産児制限運動家のマーガレット・サンガーと資産家で女性参政権論者のキャサリン・マコーミックが深く関わっていたというのは興味深い。

 その他、利益に走る製薬会社の実態などにも触れ、新薬開発の陰で繰り広げられる人間ドラマが見事に書かれている。

(早川書房 2000円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭