「ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ(上・下)」 A・J・フィン著 池田真紀子訳
異色のミステリーだ。ニューヨークの高級住宅地に住む語り手のアナは、いつも双眼鏡で近所をのぞきまくっている。引っ越してきた人間がいると、ネットを駆使して調べまわる。引っ越していった人間の現在まで調べたりするのだ。アナは家から一歩も出ない。そうして双眼鏡で近所を一軒一軒のぞき、ネットで調べている。そういう女性が主人公の小説なのである。どうしてそんな日々を送っているのかという理由はある。広場恐怖症なのだ。
外に出ていくことが出来ない。夫と娘とは生活を別にして、もう10カ月間も部屋の中にいる。ひとりで古い映画を見て、朝からアルコール浸りの日々だ。
このヒロインがある日、殺人事件を目撃する。ところが誰も、警察すらも、信じてくれない。一日中アルコール漬けになっている人間の言うことなので、信憑性がないと判断されるのである。本人にも、自分は本当に殺人現場を目撃したのだろうかという疑いがあったりする。しかし、誰も信じてくれないのなら、自分で調べるしかない――というわけで、家から一歩も出ない探偵の推理が始まっていく。いやあ、面白い。ラストまで一気読みの快著だ。
A・J・フィンはこの作品でデビューした作家で、この衝撃的なデビュー作は英米で100万部以上を売り上げ、ジョー・ライト監督、エイミー・アダムス主演で映画化も決定という。公開前にぜひ本書を読まれたい。
(早川書房 各1600円+税)