「大江戸落語百景いびき女房」風野真知雄著
大工の辰五郎が半月前に嫁にしたおたまは、隣町から見物人が来るほどのかわいらしさだが、当の辰五郎は浮かない顔。幼馴染みの平太が訳をたずねると、実は女房のいびきがすごくて、眠れないという。
にわかには信じられない平太は、あんなにかわいい女房をもらったのだから、いびきくらいは我慢しろと諭すが、辰五郎は耳栓をしても中で割れるほどのいびきに我慢の限界を超え、まともに聞いていると怖くなってくるほどだという。おまけに、おたま自身は自分のいびきに全く気づいていない。大家から長屋を出ていくよう迫られた辰五郎は、わらにもすがる気持ちで平太に紹介された医師に往診を頼むが……。(表題作)
落研出身の作家による新作落語小説集第4弾。
(徳間書店 660円+税)